教育界の黒船「国際バカロレア」とは何か?―文科省も認めたプログラムの全貌

「国際バカロレア」という言葉を聞いたことはあるだろうか?
教育界の黒船とも呼ばれ、ここ数年で急速に注目が集まっている。一言でいえば「世界統一の総合的教育プログラム」となるが、その実態はどのようなものなのだろうか?また、文科省が積極的な支援に乗り出したのはなぜなのか?「国際バカロレア」は学校改革の切り札となりうるのか?本記事では、このような疑問に対して、時代背景とともに述べていく。

「国際バカロレア」の概要

まずは概要から。国際バカロレアは、3〜19歳までの総合的な教育プログラムである。1968年にスイスで設立された国際バカロレア機構によって運営されている。このプログラムを修了すると、世界共通の大学入学資格を獲得できるため、通っている学校の国にとらわれず、世界中の大学へ進学するチャンスをつかむことができる。

その原点としては、世界をとびまわる外交官や駐在員の子どもが高校(あるいはそれにあたる学校)を卒業後、様々な国の大学にスムーズに入学できるようにしたいという思いがあったという。このような背景より、国際バカロレアのプログラムは、一つの国に偏ったものではなく、どの国の大学でも対応できるような総合的なものとなっているわけだ。

導入状況としては、2014年2月現在、世界147ヶ国、4612校において実施されている。そのうち日本では27校。現状としては、日本は「国際バカロレア後進国」といえるかもしれない。

国際バカロレアの授業はどのようなものなのか―「全人教育」

では、国際バカロレアの教育プログラムを実践している学校の授業はどのようなものなのか。まず1つ、代表的な理念として「全人教育」というものがある。「全人教育」とはなにか?国際バカロレア機構アジア太平洋地区理事の坪谷ニュウエル郁子氏の言葉をかりると、

思考力・表現力に重点を置いた高い知的水準の達成、異文化に対する理解と尊重を通じ、より良い平和な世界の創造のため、探究心旺盛で、聡明かつ思いやりのある若者を育成する

by 坪谷ニュウエル郁子 『世界で生きるチカラ』

ということである。すなわち、国際バカロレアでは、単純な知識の詰め込みやテストの点数をとるための暗記などではなく、人間力を育むための知識や教養を身につけることが、ゴールとなっている。

「全人教育」を実践する仕組み

しかし、このような「理念」を掲げる団体自体は、世界をみわたせば数多く存在している。その中で、国際バカロレアがこうして一目おかれているのはなぜか。その答えの1つは、理念を仕組み化しているところにあるのではないかと思う。

例えば、国際バカロレアの成績評価では、クラス内で順位をつけるような相対評価は決して用いない。その代わりに、学期や年度という中長期的なスパンでその生徒がどのように考えどれほど成長したかというプロセスを重視している。それゆえ、教師は、子どもたち一人ひとりの学習プロセスをきめこまかく見ていく必要がある。言い換えれば、評価をプロセスにおくという仕組みをつくることで、生徒一人ひとりのステータスに自然と目が向くようにしているとも言えるだろう。

その他にも、「教科融合型」の学習ユニット導入は、全人教育を支える仕組みの1つといえる。教科融合型の学習では、通常の学校で行われる教科単体の形式的な授業では味わえない、現実にそくした学びを行いやすい。例えば「原発」というテーマを設定してみると、科学的視点では放射線の仕組みについて探求し、社会的視点では原発の経済効果を分析するなど、かなり現実に則した深みのある学びをすることができるのだ。

このように、国際バカロレアでは「全人教育」の理念をうまく仕組み化することに成功しており、そこは経験や実績のある同機構の大きな強みであるように思う。

「国際バカロレア」が文科省と共に立ち上がる

冒頭で紹介したように、現在、日本では「国際バカロレア」のプログラムを実施している学校は27校にすぎない。しかし、そこには、追い風が吹き始めている。文部科学省が立ち上がったのだ。具体的には、2018年度までに認定校を一気に200校まで増やそうというのである。あっぱれな目標だ。

これについて、文部科学大臣の下村博文氏は以下のように述べている。

「人づくりは国づくり」であり、安倍内閣では、国の一番の宝である日本の将来を担う「人」を育てる教育の再生を、経済再生と両輪をなす最重要施策と位置づけ、その推進に全力で取り組んでいます。(中略)2013年6月に「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」を閣議決定し、そのなかで、グローバル化等に対応した人材力を強化するため、国際バカロレア認定校等を2018年までに200校に大幅に増加させる目標を明記しました。

協働的学習や21世紀型学習の必要性について、国が論じることは今までもあったが、こうして具体的な数値目標をもって施策を発表したことは注目に値する。改革はボトムアップからでしか起こらないとも言われるが、財源の大元を握る政府のトップダウンのうごきも同様に必要だ。トップとボトムの両面からぐいぐいと盛り上げていくことが、改革への近道なのだろう。政府と国際バカロレアの動向はぜひ追っていきたい。

最後に―国際バカロレアは起爆剤になれ

政府のシナリオ通り、2018年度に国際バカロレア認定校が200校になったと仮定しよう。しかし、その波及効果がなければ、約3万7千ある日本の学校のうちのほんの一部に変化が起きるだけでおわってしまう。それでいいのだろうか?否、それでは時間がかかりすぎる。国際バカロレアには学校改革の「起爆剤」として、まわりを巻き込みイノベーションの発端的存在を担っていってほしい、と切に思う。そして、自分自身、その動きの一助となっていければと思う。

参考書籍

世界で生きるチカラ---国際バカロレアが子どもたちを強くする
坪谷 ニュウエル 郁子
ダイヤモンド社
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