【インタビュー】ICT導入前に「なぜ“学校”で学ぶのか」考えていますか?―永野直先生(袖ヶ浦高等学校)

4年前、いち早く1人1台iPad体制を確立し、日本e-Learning大賞を受賞するなど対外的にも評価の高い袖ヶ浦高等学校(以下、袖ヶ浦高校)情報コミュニケーション科。同科を設立から率いていらっしゃる永野直教諭に、ICTの活用についてお話を伺ってまいりました。控えめながらも言葉の節々から熱い想いがにじみ出る永野教諭のお話は必見です。

以下、永野教諭のお話です。

ICTは実現する手段、可能性を広げるものとして使う

袖ヶ浦高校情報コミュニケーション科では、生徒一人一人にiPadを購入してもらっています。もちろん、導入時には「冷たい授業になる」や「機械で教育はできない」などの理由から、反対する先生もいらっしゃいました。しかし、実際は、ICTを「上手く」活用してあげれば、そのような心配は必要ありません。むしろ、ICTを使うことで、さらに幅広い授業が可能になり、結果として先生が思い描く授業へと近づくのです。

これは私の経験則ですが、実はICTに強く反対する先生ほど「理想の授業」を持っている場合が多い傾向にあります。つまり、理想があるからこそ、その手段についてもこだわりがあるというわけなのです。でも、そのこだわりがかえって授業の進化を躊躇させてしまっていることもあるのではないかと思っています。

そのような「理想の授業像」を持つ先生にこそ、是非ICTを活用してみてほしいと思っています。なぜなら、ICTを単なる教材提示の道具として考えるだけでなく、コミュニケーションの道具として使うことで授業の可能性が広がるからです。

しかし、一方では、「とにかくICTを使おう」となってしまって、その機能の多さや汎用性の高さにとまどってしまうという先生もいらっしゃいます。だからこそ、ICTありきで授業を考えるのではなく、「理想の授業の実現にむけてICTが役立つか」というふうに考えていくのが理想的だと思っています。 

授業のなかでのICTの取り入れ方

私の授業では、生徒同士で考えを共有し、コミュニケーションの機会を増やすためにICTを使っています。というのも、授業の中で、お互いの考え方の違いに気づくことが、生徒の知的好奇心をくすぐると考えているからです。

共有の仕方については、紙やパソコンで行うなど、10年以上まえから試行錯誤してきました。そのなかで、最近になってiPadやApple TVなどといった便利なハードウェアが流通するようになり、場所や時間の制限がなくなるオンラインでのやり取りにも魅力を感じ、利用にいたりました。

本校でICTをうまく取り入れている先生の中には、かつては機械の操作が苦手でこれまでは利用を避けてきたという先生や、ICTに反対していた先生もいます。そうした先生は、実際にタブレットや電子黒板を使って学んでいる生徒の様子を目の当たりにして、ICTに対する認識が変わったそうです。生き生きと自分の考えを述べる生徒や、のびのびと自分を表現している生徒の姿を見て、ICTの価値や可能性に気づき、今では積極的に取り入れるようになりました。

このように、元々はICTに対してネガティブな印象を持っている先生方でも、「教える」ということへの熱意があり、かつICTが授業で「使える」ものであるということがわかれば、その印象は変わっていくものです。

これからの先生に必要なこと

また、理想の授業を改めて考えるとなると、一斉授業ばかりという授業形態は見直していかなくてはならないと思います。たしかに、体系的に効率よく教えるには一斉授業が適しています。しかし、小学校から高校までずっと一斉授業ばかり、というのでは生徒の主体性や表現力を身につけるのに十分とはいえません。
 
また、極端な話ですが、一方的に伝えるだけの一斉授業であれば、ICT機器で授業の映像を見るだけで済んでしまうかもしれません。そうなると、「なぜ“学校”で学ぶのか」、学校そのものの存在意義が問われてくることになるでしょう。言い換えれば、“皆がともに集まって学ぶ学校”という場の意味そのものについて考えていかねばならないと感じています。ICTが浸透してきたいま、ICTの利用そのものに振り回されず、人間同士のコミュニケーションや創造性にどう生かしていくのか、改めて理想の授業について考えていく必要があると思います。

感想

永野先生は、ICTの活用について先端を行く一方で、生徒との関わり方や、教師の専門知識など基本的なところをとても大切にされているように感じました。だからこそ、生徒にとってより良い環境や授業を行いたいと思う気持ちがICTの利用につながったのだと思います。ICTを使うこと自体が目的となってしまい、導入のために以前より大変な思いをしてしまうというのは本末転倒なので、各自の授業スタイルに合わせていくことが大切だと感じました。

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