「学びの共同体」とは何か。ー改革を支える3つの哲学。<1/2>

教育関係者であれば誰もが聞いたことのあるはずの「学びの共同体」。
しかし、説明するとなると難しいという方が多いのではないだろうか。

「学びの共同体」は、およそ30年前に佐藤学教授により提唱され、15年ほど前から爆発的な普及を遂げた。本記事では、初めて「学びの共同体」という言葉を聞いた方でもわかりやすいように、2回に分けて「学びの共同体」についてまとめたいと思う。

「学びの共同体」のヴィジョンとは

まず、「学びの共同体」とは学校改革のヴィジョンと哲学のことである。これまでの画一的で、閉鎖的な学校を改革し、多様性を認め、開かれた学校へと変えていくことを目的としている。具体的に、「学びの共同体」では、どのようなヴィジョンを掲げているのか、ご一読いただきたい。

学びの共同体の学校は、子どもたちが学び育ち合う学校であり、教師たちも教育の専門家として学び育ち合う学校であり、さらに保護者や市民も学校の改革に協力し参加して学び育ち合う学校である。

by 佐藤学 『学校を改革する 学びの共同体の構想と実践』

ヴィジョンに掲げられているような、子どもたちが学び育ち合う学校にするためには、どのような授業をすればよいのだろうか。また、教師も「教育の専門家」として学び育ち合うとあるが、どのような学びがあるのか。さらに、保護者や市民とも「協力し参加して」とあるが、これまでと何が違うのだろうか。

具体的な話は後半の記事でお話するとして、まずは、どのような考えから、こうしたヴィジョンに至ったかを知る必要があるだろう。「学びの共同体」にはヴィジョンを基礎付ける3つの哲学があるので、そちらを見ていただきたい。

1. 公共性の哲学 (public philosophy)
2. 民主主義の哲学 (democracy philosophy)
3. 卓越性の哲学 (excellence philosophy)

公共性の哲学 (public philosophy)とは

1つ目の「公共性の哲学」では、まず教室を開くことを重視している。閉鎖されがちな教室を開き、お互いの教室を見合うことで、教師みんなで、子どもを育てる関係を築くのである。

1人でも教室を閉ざしてしまう教師がいると、この改革は実現できない。1年に1度も同僚に教室を開かない教師は、子どもを私物化し、教室を私物化し、学校を私物化し、教職という仕事を私物化しているとも言えるのである。学校を公共空間として機能させるためにも、最低1年に1回は自らの授業を公開すべきとしている。

民主主義の哲学 (democracy philosophy)とは

2つ目の「民主主義の哲学」とは、「他者と共に生きる生き方」を意味している。学校の運営については、声の大きい教師や限られた発言者によって進められることが多いが、それは民主主義とは言えないだろう。

もの静かな人でも、のびのびと過ごすことができるとき、学校は活性化すると言える。そのため、教師や子どもの、一人一人の「つぶやき」を聴き合う関係からはじめて、対話的コミュニケーションを生み出す必要があるのである。

卓越性の哲学 (excellence philosophy)とは

3つ目の「卓越性の哲学」にある卓越性とは、どんな条件にあっても、その条件に応じてベストを尽くすことを意味している。つまり、学校においては、丁寧さと細やかさを大切にして、たえず最高の学びを追求していくということである。そうすることで、学びにとってもっとも重要な倫理である謙虚さを育てることにもなるのである。

上記3つの哲学を基礎として、前述したヴィジョンへと至ったのである。

学校において、改革が難しい理由

「学びの共同体」のビジョンや哲学をもとに、教師と保護者、市民の三者が一体となって、教育に取り組むことで、学ぶ環境が格段に良くなることは言うまでもない。しかし、実態として学校は閉鎖されがちであり、教師が、保護者や地域との関係で悩むことも少なくないということを、しばしば耳にする。事実、上記のビジョンや哲学を掲げる佐藤教授も、初期では「学びの共同体」の実現に苦労したようだ。学校において改革が難しい理由は一体何だろうか。

佐藤教授によると、学校改革が難しい理由は、教師たちが学校改革の政策において、「話し合い」によって共通の理解に達することができると信じているからであるとしている。実際には「話し合い」で改革の政策が決定されることは稀である。そこで、佐藤教授は、まず改革のビジョンと哲学の合意を形成し、それを実現する具体的な3つの活動をシステム化することで「学びの共同体」を実現に導いたのである。次回は、この3つの活動システムについて詳しくみていきたい。

実際に「学びの共同体」を実践している学校を見てみたい方へ

「学びの共同体」には、学びの共同体研究会がある。ここでは、「学びの共同体」を実践している学校の公開研究会に申し込むことや、学びの会と呼ばれる「学びの共同体」についての学習会に申し込むことが出来る。興味をもたれた方は、一度参加してみるとよいかもしれない。

学びの共同体研究会

参考書籍

学校を改革する――学びの共同体の構想と実践 (岩波ブックレット)
佐藤 学
岩波書店
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