「学びの共同体」とは何かー実現のための3つの活動システム。<2/2>

前回の記事では、「学びの共同体」が掲げるヴィジョンと哲学についてお伝えしたが、今回は「学びの共同体」を実現させるための3つの活動システムについてご紹介したい。

・教室における協同的学び (collaborative learning)
・職員室における教師の
学びの共同体 ( professional learning community)と同僚性 (collegiality)の構築
・保護者や市民が改革に参加する学習参加

教室における協同的な学び (collaborative learning)

「学びの共同体」で行われる授業では、基本的には男女混合の4人グループによる「協同的な学び」が行われている。グループ活動と言えば、子どもたちがお互いに自分の意見を言い、活発に議論されている状態を想像するだろう。しかし、「学びの共同体」で行われる「協同的な学び」においては、そうした様子は見られない。「ねえ、ここどうするの?」というような子どもの気づきとも言える「つぶやき」を大切にしているのだ。そのため、教室は賑やかであるというよりは、むしろ落ち着いている。

こうした授業をする際に、最も難しいのは教師が「待つ」ことではないだろうか。教師はつい話し過ぎてしまうこと多いが、「恊働的な学び」においては、子どもが気づくのを、じっと待つことや、子どもの中の疑問を引き出す力が求められる。慣れるまでは、子どもが学習内容をしっかり理解できているのかに不安を感じ、つい口を出してしまいそうだが、そこをぐっとこらえることが大切だろう。

職員室における教師の学びの共同体 ( professional learning community)と同僚性 (collegiality)の構築

「学びの共同体」では、教師たちがお互いの授業を見合うことで、教育の専門家として成長することを目的の一つとしている。教育の専門家としての成長、とは何だろうか。そこには2つの成長がある。「職人としての成長」と、「専門家としての成長」だ。

「職人としての成長」は、よいと思う授業を模倣し自分の技術としていくことであり、「専門家としての成長」は、自ら理論立て、実践し、それをまとめることである。こうした成長はひとりでは行えない。だから、お互いの授業を見合うことが重要なのである。お互いの授業を見合った後は、善し悪しの評価は行わず、子どもがどのような学びをしていたのか、事実を振り返り、話し合うことで、学びの質の向上を目指す。

教師としては授業を見てもらう気恥ずかしさはあるとは思うが、教育の専門家としての成長を忘れずに、互いに切磋琢磨していくことが理想だろう。

保護者や市民が改革に参加する学習参加-保護者の参加

「学びの共同体」においては、保護者や、地域の教育委員会と連携することが持続に必要であるとしている。特に、保護者とも学び合う関係を築くことは必須条件としている。なぜなら、学校改革の最大の障壁は、教師と保護者との相互不信にあるからである。佐藤教授は保護者と教師との関係を以下のように述べている。

保護者は子どもの教育への関心よりも学校と教師への不満にとらわれており、教師は子どもへの対応以上に、保護者への対応に苦慮している。最大の犠牲者は子どもである。

by 佐藤学 『学校を改革する 学びの共同体の構想と実践』

そこで、「学びの共同体」では教師と保護者とが相互の信頼関係を築けるように、「学習参加」という活動システムを考案し、実践してきた。「学習参加」とは、保護者や市民が学校改革に参加し、子どもや教師と同様、学びの共同体に参画する活動のことである。例えば、現在行われてる授業参観を、保護者も授業づくりに参加する「学習参加」に転換するなどが挙げられる。教師と保護者とが、次世代を担う子どもに対する社会の責任を共有することで、相互の信頼関係を築き、学校改革を実現できるとしている。

保護者や市民が改革に参加する学習参加-市民の参加

また、地域の教育委員会との連携も重要だ。もし1校においてだけの変化であれば、学校改革とは呼べないだろう。市町村教育委員会など行政によっても推進してゆかなくてはならない。しかし、学校は閉鎖的であり、学校改革を教育委員会の「トップダウン」だけで行っても学校は思うようには変わらない。そこで、「学びの共同体」では、モデル校となるパイロット・スクールを建設することを推奨している。これまでの実績から、地域にパイロット・スクールを建設し、そこが安定するとその広がりは爆発的なものとなるのがわかっている。

このように、学校が変わるには、保護者や市民と協力して学校改革を行うことが大切だ。保護者の理解と協力があってこそ、1校ずつの改革は進み、教育委員会などの市民との連携があってこそ、改革は広がるのである。

「学びの共同体」の実現に踏み出す前に確認したいこと

このような「学びの共同体」の学校改革に踏み出す前に、確認して頂きたいことがある。

もし学校改革が校内に分裂を生み出すようであれば、決して改革に取り組んではならないということだ。改革がもたらすデメリットの方が、改革によるメリットよりもはるかに大きいからだ。さらには、改革に真摯に取り組む教師たちに深い傷を与えてしまう上に、その不協和音は必ず生徒に響いてしまう。

また、ご紹介した3つの活動システムが有効に機能するためには、対話的コミュニケーションがなされてなければならない。つまり、教室にも職員室にも、学校と地域との間にも「聴き合う関係」が築かれているということである。

校内に分裂を生み出さないような共通理解に努めるところからはじめ、徐々に対話的コミュニケーションを浸透させてから、改革にあたるのが望ましいだろう。

最後にー変わる学校の姿

明治時代に学校制度が出来てから100年以上もの間、学校は変わらず一斉授業のスタイルをとってきた。その背景には、安定して成長し続ける社会があったことが伺える。しかし、安定して成長することが保証されなくなった現代においては、解のない問いに立ち向かう力が求められている。その力として、じっくり考えられる思考力と、他者と助け合えるコミュニケーション能力が鍵を握ってくるだろう。これまでの学校教育のあり方を見直し、これまで以上に教師と保護者、市民とが一体となる時なのかもしれない。

実際に「学びの共同体」を実践している学校を見てみたい方へ

「学びの共同体」には、学びの共同体研究会がある。ここでは、「学びの共同体」を実践している学校の公開研究会に申し込むことや、学びの会と呼ばれる「学びの共同体」についての学習会に申し込むことが出来る。「学びの共同体」は言葉で説明するよりも、実際に見ていただいた方が、その空気感がよくわかっていただけるだろう。

学びの共同体研究会

参考書籍

学校を改革する――学びの共同体の構想と実践 (岩波ブックレット)
佐藤 学
岩波書店
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