愛和小学校で感じたテクノロジー導入の現実と可能性|屏風絵とACボード、読書感想とednity

学校の授業とテクノロジーはどのように融合されていくのか?
6月28日に行われた多摩市立愛和小学校の公開授業では、iPad や Apple TV といったテクノロジーの学校現場での活用事例が目白押しであった。本記事では、そこで感じたテクノロジーの可能性について、フレームワークを用いて分析してみることにした。

今回使用するフレームワーク「SAMRモデル」について

分析をはじめる前に、今回使用する「SAMRモデル」と呼ばれるフレームワークをご紹介しよう。

「SAMRモデル」は、学校現場へのテクノロジーの導入レベルを測るもので、SAMRはそれぞれ「S(Substitution、代替)」、「A(Augmentation、拡大)」、「M(Modification、変更)」、「R(Redefinition、再定義)」を示している。使用しているテクノロジーが「S(代替)」の役割であるうちはまだまだうまく活用できておらず、「R(再定義)」までできると、うまく活用できているといえる。

詳しくはこちら
SAMRモデルとは?学校現場へのICT導入の指針となる注目のフレームワーク

屏風絵を読み解く、ACボードの活用

この授業では、まず6年生の児童たちが、手元にある iPad で戦乱の様子を描いた屏風絵を見ながら、「当時どのような武器が使われていたのか」などを適宜ピンチアウトしながら学んでいった。終盤には、長篠の戦いの屏風絵を見ながら、「どちらが優勢であるか」、また「その根拠は何か」といったことを、ACボードというアプリを使用することで屏風絵内に書き込み、そのまま発表資料を作成。発表の際には、Apple TV を用いて、ACボードで作成した資料を大型テレビに映し出す、という流れであった。

ACボードの活用シーン

ACボードで付箋を挿入している様子

この授業の様子を、SAMRモデルで分析すると、それぞれ以下のような作業が当てはまるだろう。

S(代替)

屏風絵を、資料集ではなく、一人ひとり手元のiPadで見る。

A(拡大)

ピンチアウトすることで屏風絵の細部まで確認する。あくまでも「見る」という行動の延長線にある行動。

M(変更)

「ACボード」というアプリを利用して、付箋や書き込みを行うことで、屏風絵が発表資料そのものになる。また、それを Apple TV で映し出すことで、一人ひとり独自にデザインされた屏風絵を用いて発表を行うことができる。「創る」という作業は、資料集の屏風絵の延長線というよりも、異なるレイヤーだといえる。

R(再定義)

今回の授業では、ここまでは踏み込めていなかったように思う。実際、「再定義」を達成するのはなかなか難しい。テクノロジーが元々あるという前提のもとゼロベースで授業を再構築していくことが求められるからだ。

この授業では、高いレベルでテクノロジーを活用できていたように思う。単にタブレットを導入しただけの学校であったら、屏風絵をタブレットで閲覧するだけで終わってしまっていたかもしれない。しかし、当授業では、ACボードや Apple TV を活用することで、児童一人ひとりが「考え創る」という段階にまで達しており、非常に良い流れだと感じた。

読書の感想を共有する、ednityの活用

次に、朝の学習の時間に行っていた活動について見てみよう。このクラスでは、朝、授業が始まる前に読書の時間が設けられている。この日は、まずそれぞれの児童が新聞のコラムを読み、最後の5分ほどで、それぞれが読んだコラムについての感想を ednity(学校向けコミュニケーションサービス)に記入し、自分の思ったことをクラスメートに共有するという流れであった。

愛和小学校でednityが活用される様子

学校向けコミュニケーションサービスのednityを使って感想を書き込む様子

さて、このケースを先ほどと同様に分析してみよう。

S(代替)

紙の感想を書いて先生に提出する代わりに、Eメールで感想を書き先生に送信する。

A(拡大)

ednityを利用してみんなで一斉に書き込みを行うことで感想を共有する。お互いの投稿を見る。

M(変更)

お互いの投稿に反応しあい、そこからコミュニケーションが生まれる。紙で先生に提出していたときにはなかった「コミュニケーション」が発生するという意味で、「変更」フェーズといえる。当クラスの授業では、このフェーズに入りかけている様子であった。

R(再定義)

たとえば、それぞれの児童は、自宅で本を読み、それについての感想をednityに投稿してから、学校の授業にのぞむ。そして、授業内では、それぞれの投稿をもとにディスカッションを行うようにする。このように、時間の使い方をまったく変えてしまうこともできる。ここまでできると、「再定義」といえるだろう。

この時間については、工夫によっては、さらにコミュニケーションを活発し、学びを深めることができるのではないかと思った。具体的には、子どもたちそれぞれの感想について質問やフィードバックを投稿する時間をとってあげたり、まずは先生が感想を書いてあげることで意見交換を促進するといったことが考えられる。さらに、iPad の持ち帰りが可能となれば、自宅でもクラスメートとの学びの深め合いが出来るようになるかもしれないと感じた。

おもったこと

全体を通して印象的であったのは、児童たちが本当に iPad に馴染んでいるということであった。子どもは慣れるのが早いといわれるが、ここまで自然と授業の中で iPad が使用されている様子は、正直驚きであった。また、授業の中で「それホームボタンに追加した?」といった声が聞こえてきたのも面白かった。iPad の操作方法について、子どもたちの間で教え合いが起きているというわけだ。IT系に詳しい児童がリーダーとなって教えていくという流れが自然発生的に起きてきており、良いサイクルだと感じだ。

愛和小学校では、校長である松田孝氏の強力なリーダーシップのもと、学校全体としてICTの導入が進められている。なかには、そのような動きに難色を示している先生もいるようだ。もちろん、ICTの導入が全てなわけではないし、当校の取り組みは授業構成に大きな影響を及ぼすため、そのような意見が出ることも理解できる。しかし、このような学校全体としての取り組みは、業界全体に大きく貢献しているように思う。全てがうまくいくわけでないが、こうして試行錯誤を繰り返し、成功ケース・失敗ケースが世の中に広まっていけば、全体としてノウハウが貯まりより良いICT活用につながるはずだ。そのようなムーブメントの先陣を切る愛和小学校、そしてそのリーダーである松田孝校長先生の動きには、これからも目が離せない。

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