教科無し、教室無し、成績評価無し—アメリカで芽吹いた新時代の教育とは?

皆さんは、“授業”と聞いたらまずどんな光景を思い浮かべるだろうか。

日本の学校では、もう何十年も前から集団一斉型授業、つまり教師一人の話を多数の生徒が聞く、というスタイルが長年受け継がれている。しかし、国際社会の中で比較してみると未だにこのような形で授業を行なっている国は稀となりつつあるのが現状だ。今回は、アメリカで進行中の最新型教育の動きについて紹介しよう。

実社会と強力に結びついた授業

マサチューセッツ州ケンブリッジにNuVu Studioという学校がある。NuVuはプロジェクトベース型学習(Project Based Learning:以下PBL)の教育機関だ。授業初日から学生たちは10個のグループに分けられ、大学院生のメンター達と共に、実社会に即した様々なテーマについて取り組んでいく。

たとえば「最新の医療」というテーマでは、ボストン地域で切断手術を受けた患者やその家族、外科医などにチームごとで実際にインタビューを行い、子ども用の義手模型を3Dプリンターによって作成した。たった12〜18歳である中高生の彼らにとって、「手頃な値段で子ども用の義手を開発せよ」という課題はかなりの難題かと思われたが、なんと彼らはわずか2週間でクリアしてしまったのだ。

NuVuプログラムの概要

NuVuとは、中高生のための教育イノベーションプログラムである。NuVuの授業には多くの学問領域にわたる協同的なプロジェクトが組み合わされており、クリエイティブな活動において生じる様々な課題に対してどのように対応していくべきかを教えている。特に以下の5つの大きな特徴がある。

 

① コース無し

代わりに、「スタジオ」がある。子どもたちは約10名ずつのグループに分けられ、大小様々な決まった解答のない問題に2人のコーチとともに取り組む。

② 教科無し

代わりに、全てが融合している。学生たちは自らスタジオ間を移動し、例えばロボットをデザインしたり、ボストンの街をケーブルカーシステムで再構想したりしていく。

③ 教室無し

代わりに、全てのニーズに対応するオープンスペースがある。

④ 時間割無し

代わりに、学生たちは一つの問題に対して毎朝9時から午後3時まで取り組み、2週間をかけて取り組んでいく。

⑤ 成績評価無し

代わりに、学生たちのデザインを記録したり、最終作品を見たりするためのポートフォリオがある。

 
生徒たちは1ターム11週間の中で、4つのトピックに連続して取り組み、周囲から多数のフィードバックを得ながら様々な領域について学んでいく。この中で、創造力、論理的思考力、コミュニケーション力、調査能力そして日常において推測や分析を行う能力を総合的に身につけていく(これらは21世紀型スキルと呼ばれる)。

NuVuの創設者である元MITの博士、サイード・アリダ氏はこう断言する。

NuVu Studioは、人間社会の本質的な問題の解決方法を見つける場所である。学生たちがここで受けている教育体験は、今までの学校とは全く異なるものなのだ。

彼は、学生たちは実社会に即した問題の解き方を教わるべきだと信じている。

学校で取り組む必要性

教育関連に特化した投資家であるマイケル・スタトンによれば、

現状の学校教育では教養科目の学習や時間割システムに固執しているため、子どもたちが自主的に知識を探求できるような時間を残すことができていない。

という。

オンライン上には様々なPBLのウェブサイトがあるが、ほとんどの生徒はもうすでに大学入学の為の準備や、課外クラス、部活動、ボランティア、そして宿題などに忙しく追われているため、これ以上学校外で他のことに費やす時間を増やすのは非常に難しい。

潮は変わり目だ

PBLをもっと主流にするために様々な動きが起きている。
事業家、教師、自治体などの間にある隔たりを埋めたり、先生たちにリソースを提供したりする組織があるだけでなく、全ての子どもに対してPBLを必修にしようという運動もある。さらに、PBLを導入している学校に対して定期的に資金援助をしている基金もある。

このように様々な団体がPBLを支持しているのだ。創設者のアリダ自身も奨学金を用意し、公立学校の生徒も参加できる方法を模索している。

アリダは他の州や地域でもこのようなプログラムが活性化することを願っている。
「私たちは新たな教育の考え方を示している。」彼は言う。

この教育方法において、生徒たちはクリエイティブになる権限を与えられ、そして実際に自分たちの考えで物事を実行している。これは私たちが皆すべき教育そのものだろう?

 

思ったこと

アメリカでも芽が出たばかりであるこの教育方法は、まさに新時代の教育であろう。コースも教科も教室も時間割も成績評価も無いという、いわば日本の公教育を受けてきた私たちにとっての学校像を根底から覆す方法であることから、普及に時間がかかることは想像に難くない。

しかし、私たちが本当に物事を「学ぶ」というのはどんな時だろうか。実際に手や体を動かし、問題解決のために頭を働かせ、なにかをつくりだす時ではないだろうか。

この教育において、子どもたちは実社会に出た時どのように思考を働かせ、解決方法を導いていけばよいかを、一つの課題にじっくり取り組む中で相互作用的に学んでいくことができる。そしてそのように実体験で得た知識というのはすぐに実践できるものだ。これこそ私たち大人が子どもたちに授けたい能力ではないだろうか。

今後ますます多くの学校や企業、団体がPBL:プロジェクトベース型学習に関心を持ち、アメリカ全土に広がっていく可能性がある。日本でも今後このような教育が始まる時代が来るかもしれない。今後のさらなる展開に要注目だ。

 
[参考記事:No Courses, No Classrooms, No Grades — Just Learning - MindShift ]

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